先日の教育委員会での教育長の配布してくれた資料と、尼崎の友人から」もらった資料を組み合わせて
1. 導入:増え続ける長期欠席、その「真の原因」はどこにあるのか?
近年、日本の教育現場を揺るがしているのは、不登校をはじめとする「長期欠席者」の爆発的な増加です。文部科学省の調査によれば、国内の長期欠席者の割合は2018年度の2.47%から、2024年度には5.52%へと、わずか6年で倍増しました。今や、どの教室に一人いてもおかしくないこの現象を前に、私たちは立ち止まって考えなければなりません。
「子どもたちが変わってしまったのか、それとも社会が変わったのか?」
この問いに対し、主観的な憶測ではなく、膨大な「エビデンス」によって答えを導き出した研究があります。兵庫県尼崎市において、2019年から2023年にかけて約5万人の小中学生を対象に実施された行政データの追跡調査(RIETI Discussion Paper 26-J-020)です。
学力、性格(非認知能力)、そして家庭環境。これまで個別に語られてきたこれらの要素を数値化して解析することで見えてきたのは、私たちが抱いていた「不登校のイメージ」を覆す驚くべき事実でした。
2. 衝撃の事実1
算数が「学校への壁」になる?――積み上げ型教科の残酷な側面
調査の結果、学力と欠席リスクの間には強い相関がありましたが、注目すべきはその内容です。国語のスコアよりも、明らかに「算数・数学」のスコアの低さが、長期欠席の強力な予測因子となっていたのです。
算数は、前の単元の理解が次の学習の前提となる、典型的な「積み上げ型」の教科です。一度どこかでつまずくと、自力でのリカバリーが極めて困難になります。「教室にいても内容が全くわからない」という苦痛は、子どもの自尊心を削り、致命的な学習意欲の減退を招きます。
データは、低学力が単なる「成績の問題」ではなく、将来の中退や長期欠席を誘発する直接的な「経路」であることを示しています。特に算数における学習の遅れは、学校という場所そのものを忌避させる「見えない壁」として立ちはだかっているのです。
3. 衝撃の事実2
性格の「良さ」が裏目に出る?――「開放性」が高い子ほど休みやすいというパラドックス
「真面目で勤勉な子が学校に通い、そうでない子が休む」という単純な構図も、データは否定します。非認知能力(ビッグファイブ)の分析で浮かび上がったのは、「開放性(知的好奇心や独自性)」が高い子供ほど、むしろ欠席リスクが高まるという意外なパラドックスでした。
ここで重要なのは、先行研究や同調査の相関分析が示す驚きの側面です。実は、開放性の高い子供たちは「学校が楽しい」と感じており、さらには「先生が自分を認めてくれている」という実感も平均より高い傾向にあるのです。それなのに、なぜ彼らは学校を休むのでしょうか。
ここには、学校環境との「不適応」ではなく、彼らが持つ「知的な自律性」が関係しているという新たな仮説が浮かび上がります。独自の発想や強い好奇心を持つ子供たちは、一律の教育を重んじる集団生活よりも、自らの関心に基づいた自由な学習環境や休息を「主体的に選択」している可能性があるのです。彼らにとって欠席は、必ずしも消極的な回避ではなく、自らの知性を守るための自律的な行動なのかもしれません。
4. 衝撃の事実3
欠席理由は「進化」する?――低学年時の「家事都合」が「不登校」への入り口
長期欠席の理由は「不登校」「病欠」「家事都合」に分類されますが、これらは時間の経過とともに「進化」することが判明しました。
特に注意すべきは「家事都合」です。これは経済的困窮(生活保護受給世帯など)と極めて強く直結しており、小学校低学年時に多く見られます。特筆すべきは、前年度に「家事都合」で休んでいた児童が、翌年に「不登校」へと移行する確率は39.0%に達するという事実です。
家庭の貧困や構造的な困難によって「休まざるを得なかった」初期の状況が、適切な経済的介入のないまま放置されることで、次第に心理的な抵抗感を含む「不登校」へと固定化していく――。世帯属性の中でも「生活保護受給」は欠席を予測する最も強力な因子であり、経済的格差が不登校という形で「教育の格差」へと再生産されている実態が浮き彫りになりました。
5. 衝撃の事実4
コロナ禍が壊したのは、子どもではなく「学校の当たり前」だった
なぜコロナ禍を経て欠席者が倍増したのか。統計手法(Blinder-Oaxaca分解)を用いた分析により、そのメカニズムが解明されました。
実は、コロナ禍前後で子どもたちの「学力」や「性格」の構成が劇的に変わったわけではありません(構成要素)。変わったのは、それらの属性が欠席に結びつく「影響の強さ(係数効果)」です。いわば、以前からあった学力不安や性格的特性、家庭環境といった「小さなひび割れ」が、コロナ禍という衝撃によって一気に「巨大な亀裂(キャニオン)」へと増幅されたのです。
以前なら「無理をしてでも行く」という社会的規範がブレーキになっていましたが、コロナ禍の休校や分散登校、さらにGIGAスクール構想による端末普及が、その規範を緩和させました。特に小学生においては、コロナ禍以降「学級規模(クラスサイズ)」が欠席に与える影響が増大しており、過密な環境が脆弱性を持つ子の負担をより重くしています。社会全体で「欠席を許容する土壌」が形成されたことで、潜在的なリスクを抱えていた子供たちが、登校を回避する心理的ハードルが下がったのだと考えられます。
6. 結論
これからの「学校」と「支援」はどうあるべきか?
尼崎市の5万人のデータが突きつけたのは、従来の「不登校支援」の枠組みを抜本的に変える必要性です。
まず、支援のタイミングを「小学校1年次」からに大幅に早期化すべきです。低学年時の「家事都合」は、将来の不登校を予測するレッドフラッグです。ここでは学校だけの努力ではなく、生活保護世帯等に対する「プッシュ型の経済支援」を教育行政と連携して届ける仕組みが不可欠です。
次に、原因に応じた「ターゲット別介入」の徹底です。
- 学力要因(算数):一度の遅れを放置せず、ICT等を活用した徹底的な学び直しサポートを行う。
- 経済要因(家事都合):福祉部局と連携し、家庭の構造的な課題にスクールソーシャルワーカーが介入する。
- 心理・性格要因(不登校・病欠):スクールカウンセラーによるケアに加え、知的好奇心の高い子や感受性の強い子が「学校外」でも学べる多様な教育機会を保障する。
データが示す真実は、私たち大人に問いかけています。学校は、今や多様化した子どもたちの受け皿として、その形を柔軟に変える準備ができているのでしょうか?
誰一人取り残さないための「証拠(エビデンス)」は、もう手元に揃っているのです。

よし、これも一般質問に組み込もう!と今修正中
